- 近頃体力の衰えが気になる
- 以前より歩くのが遅くなった
などと自分の体力の異変に気づきながらも、何もしていない人は少なくないと思います。
活動量が低い場合、ヒトの筋肉量は30歳頃から下半身を中心に年間約1%ずつ低下するといわれています。
「年なんだから仕方がない」
「今更運動してもムダだ」
と理由をつけて何もしないでいると、「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」になってしまう可能性が高まります。
「ロコモティブシンドローム」とは、どのようなものなのでしょうか?
ロコモティブシンドローム(運動器症候群)とは?
筋肉や骨、関節、靱帯、腱、神経といった運動器に障害がおこり、日常生活に何らかの支障が生じている状態です。
「ロコモティブシンドローム」になると、「立つ」「歩く」といったこともできなくなってしまいます。
つまり、将来「寝たきり」になる可能性が高まるということです。
そこで必要となるのが「運動」です。
「運動」は、「ロコモティブシンドローム」だけでなく、さまざまな「加齢によって引き起こされる症状」に対して効果があると言われています。
運動による効果とは?
「加齢によって引き起こされる症状」に対して、「運動」が及ぼす主な効果は次の通りです。
- 筋肉の増強
- 関節痛の改善
- 骨粗鬆症の改善
- 体力の向上
- 生活習慣病の改善
- 認知機能の改善
- 気分障害の改善
- 睡眠の質の改善
「ロコモティブシンドローム」は、筋肉、骨、関節、神経などの運動器に障害がおこることから始まります。
このことから「筋肉の増強」、「骨・関節の改善」そして「体力の向上」が、予防につながることは予想できるはずです。
また、脳血管障害による身体麻痺などの運動器障害を考えると「生活習慣病の改善」も大切なこととなります。
では、どのような「運動」が「ロコモティブシンドローム」予防のために必要なのでしょうか?
“ロコモティブシンドローム”の予防のために必要な運動とは?
どんな運動でも効果があるわけではありません。
どの「部分」を、どれ位の「強度」で鍛えるのかが重要になります。
どの”部分”の運動か?
それは「下半身」の筋肉を鍛える運動です。
お尻から脚全体にかけての「下半身」の筋肉は、まさに「立つ」「歩く」ために必要な筋肉です。
そして、「下半身」には大きな筋肉が集まっています。
運動により「下半身」を積極的に動かすことで、
- 筋肉が増強する
- 代謝・血行がよくなる
- 骨に適度な負荷がかかる
- 関節の支持組織が補強される
などの効果が得られます。
これに付随して、
- 転倒の予防
- 血圧の改善
- 血糖値の改善
- 血中脂質の改善
- 肥満の改善
- 骨粗鬆症の改善
- 関節痛の改善
などの効果も期待できます。
「年なんだから仕方がない」
「今更運動してもムダだ」
とあきらめる必要もありません。
筋肉量は、何歳になってても、きちんとトレーニングをすれば増えると言われています。
どれ位の”強度”の運動か?
- ある程度強度が高い
- 継続して行う
ことが大切です。
「散歩」「家事」程度の強度では、目的を達成することはできません。
また「三日坊主」で終わってしまっては、効果は得られません。
そこで、筋肉を増強するために必要な「トレーニングの原則」と「強度」を知っておきましょう。
詳細については、次の章から説明したいと思います。
筋肉を増強するための3原則
筋肉を増強するためには、トレーニングの原則を知っておくことが必要です。
①過負荷の原則
日常使用する筋力より、高い負荷をかけなければ筋肉は成長しないというものです。
いつも徒歩で通勤している人が「散歩」をしたとしても
いつも家事をしている人が「家事」をしたとしても
筋肉量は増えません。
②漸増負荷(漸進性)の原則
負荷を少しずつ増していかなければ、筋肉は成長し続けられないというものです。
運動により筋肉量が増えた場合、同じ運動を続けていても筋肉の成長は止まってしまいます。
③反復性(継続性)原則
適切な負荷での運動を、反復して行わなければ運動の効果は得られないというものです。
運動効果、つまり筋肉増強や体力向上の効果を得るためには①、②の原則に従った強度の運動を、習慣化して行う必要があります。
筋肉増強するために目標とする運動強度とは?
筋肉増強のために目標とする「運動強度」とは、自分の「目標心拍数」を維持できる運動の強さのことです。
「目標心拍数」は、次の数式から求めることができます。
- 「最大心拍数」=220-「年齢」
- 「目標心拍数」=(最大心拍数-安静時心拍数)×0.6+安静時心拍数
(例)「年齢」:50歳、「安静時心拍数」:70回/分の場合
「最大心拍数」=220-50=170回
「目標心拍数」=(170-70)×0.6+70=130回
となります。
「筋肉増強」、「心肺機能の向上」を目的とする場合、最大心拍数の60~80%になる強度の運動が必要であると言われています。
一般人の場合ならば、60%程度が妥当であるとされています。
その理由としては、これ以上の強度の運動を行っても、
- 「心肺機能の向上」があまり見込めない
- 「筋肉が疲労」して運動を継続することが難しくなる
ことが挙げられています。
またエネルギー源として「脂質」と「糖質」が使われることから、「肥満」や「生活習慣病」の改善にも繋がります。
では、具体的にはどのような運動が最適なのでしょうか?
オススメの運動とは?
運動形態は問いませんが、60%の強度の運動を週60分以上5ヵ月間行うと、「筋肉増強」、「心肺機能の向上」、「生活習慣病予防」などの効果が得られます。
運動の形態は、ウォーキング、ランニング、昇降運動でも何でも構いません。
ただ、効果を得るためには、
必要があります。
しかし、一般人にとって15分間継続して「ややきつい」運動をすることは、かなり「きつい」ものがあります。
「きつい」と感じる運動は、長続きが困難となる可能性が高くなります。
継続できなければ、当然効果が得られなくなってしまうことに。
そこで、「60%の強度」と「40%の強度」の運動を交互に行うことをオススメしたいと思います。
「40%の強度」の運動は、「きつく」は感じませんが「脂肪燃焼」には効果のある強度の運動です。
「ややきつい」運動は、最大3分を目安にすると続けやすいようです。
1分間交互で15セット、1分30秒交互で10セット、3分交互で5セットなどなど・・・。
自分のペースで「60%の強度」の運動を1日15分、または週60分以上行うことを目標にしましょう!
運動する時間は?
「60%の強度」と「40%の強度」を交互に行う運動を
- 1日30分
- 週4回
- 5ヵ月間
実施したところ年齢、性別、初期体力に関係なく最高酸素消費量が初期値の10%向上したという報告があります。
30分の運動を1回で行う必要はなく、分割して行っても効果があります。
むしろ分割して行った方が、脂肪が消費される状態が長時間保たれます。
有酸素運動後約2~4時間は、体内で脂肪の消費が高まっている状態となります。
そのため、1日の中で短めの運動を複数回行うとその効果が持続するというものです。
次に「短めの時間」とは、何分位がいいのでしょうか?
脂肪燃焼は、1分以上の運動でが始まり、10分程度で有意に働くことから、10分間程度の運動を分散して行うといいでしょう。
この効果は、以下のような運動を週末にまとめて行っても同様に得ることができます。
- 1日30分、週4回以上と同様(120分以上)の運動である
- かつ、「60%の強度」の運動を1日15分、週4回(=60分以上)取り入れる
- 期間は、継続して行う
まとめ
一生自分の足で歩くために必要なこととは、以下のように「運動」を行うことです。
- 「60%の強度」と「40%の強度」を交互に行う
- 1日30分以上、週4回以上
- または、週120分以上、かつ「60%の強度」の運動が60分以上
- 期間:継続して行う
予防の意味では、早く始めることに超したことはないでしょう。
「今日」そして「今」この瞬間が、自分にとって「最も若い時」です。
「今」から始めてみましょう。